
1995年上半期と1996年上半期の比較である。 どちらの時期も、蒸留酒、ワイン、高アルコール濃度ビール全ての飲料に共通して売上げ減少の傾向が見られる。但し、最も顕著な減少がみられるのは、スウェーデン南部の4つの郡、すなわちデンマークに近く安いビールやワインを入手しやすい郡である。南部と他地域との減少幅の差は高アルコール濃度ビールに関して最も顕著で、スウェーデン南部が12%の減少であるのに比べ、他の地域ではわずか4%である。 これらの数字の持つ2つの側面についてここで触れておく必要があろう。1つは南部の4郡と他地域の違い、もう1つは売上げの減少が消費の減少を反映したものかどうかという点である。 デンマークはスウェーデン南部と近接しており、多数のフェリーが両国間を行き交っている。最も近い航路をとれば約20分で渡ることができ、対岸で買い物をして戻ってくることは非常に簡単である。デンマークのアルコール税や価格は我が国より格段に安く、多くのスウェーデン人がデンマークに渡ってアルコールを購入している。1995年1月1目のスウェーデンのワイン・ビールの輸入割当てが引き上げられた(ワイン5リットル、ビール15リットル)のと同時に、デンマークで購入した多量のアルコールが持ち込まれているのは明白である。 両国間の約1,500万回に及ぶ渡航のうち、約70〜80%がスウェーデン人によるものであると推定されている。1995年に渡航者数は約9%増加したが、1996年の最初の4ヵ月で駅にほぼ同じ数字に達している。 主にデンマークからの個人輸入が、他地域とスウェーデン南部の高アルコール濃度ビールの売上げの差を、控えめに言ったとしても「相殺している」と信じるに足る理由がある。国内に持ち込まれる安いビールの量が、専売店の売上げ減少分を上回っているのである。 他国民と同様、スウェーデン国民が消費するアルコールは統計に表れているよりも多い。非計上消費は合法的なものと非合法なものに分けられる。合法的消費には、個人用自家製ワイン、個人が海外からの帰国時に持ち込むアルコール、他国で消費するアルコールなどがある。非合法の非計上消費には自家製蒸留酒、蒸留酒の大規模な不法製造、密輸などがある。 計上消費には小売り専売公社の売上げ以外に、食料品店で販売される2級ビール、飲食店が卸売り業者やスウェーデンの醸造所から直接購入するアルコールなどが含まれる。次の数字は、1995年度の小売り専売公社の売上げの推移/計上消費の推移を順に%表示したものである。蒸留酒:−8/−8、ワイン:−4/−4、高アルコール濃度ビール:−1/+7。これからわかるように、小売り専売公社以外の経路から合法的に購入されたのは主に高アルコール濃度ビールである。 非計上消費の正式な推計がないのは当然であるが、別の推計から、非計上消費は計上消費の30〜40%であることがわかる。約15年間についていえば、たとえ不法な蒸留酒の量が増加しているとしても、それが蒸留酒の売上げの大幅減少分を相殺しているとは考えられない。密輸はスウェーデンでは新しい現象で、EU加盟によって国境規制を受けずに越境できるようになった1995年1月1日以降増加してきた。 結論として、1995年度の小売り専売公社の売上げ減少は、アルコール総消費量の減少を反映したものではないと言えるであろう。飲食店が他の経路から合法的に仕入れたアルコールと非
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